2022年よく聴いた曲たち

 個人的に今年は目まぐるしい一年でした。引越し、仕事の移動、身内の死などなど…。変化に弱い性格なのでその度にうじうじしてましたが、そんな苦しい時間を音楽と友達に支えてもらった気がします。例によって2022年より前に発表された曲も含まれます。

 

新居昭乃「無言の詩」


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 2022年3月に発売されたアルバム『ミツバチの羽音』は初のセルフプロデュース作品(うち2曲は保刈久明作・編曲)ということで、打ち込みと弦楽器、ピアノを主体としたシンプルな編曲と極限まで削ぎ落とした世界観でよりパーソナルに新居昭乃の音楽を感じることのできる作品です。今作唯一のリズム隊(打ち込みだと思うけど)と弦楽器がうつくしいプログレ風「dream,dream」、物語調の歌詞と繊細なアルペジオが独特な物悲しさを醸し出す保刈久明作・編曲の「金の糸の話」などどの曲も粒揃いなのですが、強めのリバーブがかけられたピアノの響きと遠い記憶と心象世界を自由に行き交う歌詞が無限の奥行きを感じさせる「無言の詩」に心打たれました。今年はライブに2回ほど参加でき、そのうちの1回で個人的新居昭乃楽曲No. 1の「Unknown Vision」が聴けて感激でした。新居昭乃の音楽はどんなときも私に安寧の地を与えてくれます。そんな期待を裏切るどころか超えていった一作でした。

 

宇多田ヒカル「BADモード」


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 2022年1月に発売されたアルバム『BADモード』は各所で絶賛の嵐でした。特にリード曲にもなった上記曲は軽やかかつ乾いた打ち込みやホーンの音とセルフケア・恋愛や友愛で区切らない普遍的な他者への愛情など世相をも巧みに反映させた歌詞が素晴らしい。惜しむらくは既出曲が多すぎること(その既出曲が全部凄まじいんだけど)、既出曲を圧倒するアルバム曲がなかったこと(どれも「新しい宇多田」を感じさせる良曲ではある)でしょう。あと個人の思想による問題なんですが、楽曲(コーラスやバイオリンで参加!)や歌詞カード、ジャケ写などで子どもを全面に押し出されているのが受け付けなかった。この作品もとい今の宇多田ヒカルの表現として最高であることは間違いないが、私個人の思想のせいでどうしても…。とはいえ歴史に残る名作。

 

植田真梨恵EUPHORIA


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 2022年9月に発売されたアルバム『Euphoria』のタイトル曲。ことあるごとに構想を仄めかしてきたアルバムがやっと制作されると聞き楽しみにしてましたが期待以上の出来でした。植田真梨恵の音楽はインディーズ時代とメジャーデビュー後に二分されると思っていて、それぞれに魅力と物足りない部分があったのですが、前作『ハートブレイカー』でそこから一皮むけたなと思っていました。その流れを引き継ぎ、植田真梨恵の音楽をさらに深化させた一作として『Euphoria』は今までとは異質な輝きを放っていると思います。おどろおどろしい轟音と薄暗いイメージ、過去と現在を淡々と織り交ぜた上記曲が特に素晴らしい。でもいかんせん全編通すと地味であることは否めないというか…。熱心な植田ファン以外なら、むしろ全く植田真梨恵を知らない人に刺さるんじゃないかな。来年はラズワルド編成のベストアルバムやライブもあるし、これからの植田真梨恵がますます楽しみになりました。

 

 斉藤壮馬「埋み火」「mirrors」


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 なんと今年はミニアルバムを2作もリリースしてくれました。2月発売の『my beautiful valentine』、12月発売の『陰/陽』とどちらも安定して良い作品でしたが、前者のリード曲候補だったというシューゲイザーど真ん中の「埋み火」に心の柔らかい部分を握られたまま過ごした一年でした(しかも珍しく本人の心情が滲み出た歌詞だって話がまた心をかき乱してくる…)。クセの強い楽曲が並ぶ後者の中でも一際存在感を放つリード曲「mirrors」は凛として時雨的エモーショナルミクスチャーロック色の強い楽曲でこちらもストレートに心揺さぶられる一作。来年のソロライブが本当に楽しみ!

 

Fling Posse「とりまget on the floor」


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 昨年末の記事を読んでいただければ分かるのですが、去年は甚だしい解釈違い曲のせいでヒプノシスマイクに病んだ1年でした。今年6月に発売されたヒプノシスマイク2ndアルバム『CROSS A LINE』に収録された新曲「とりまget on the floor」の作詞がAFRO PARKERの弥之助だと知ったときあまりの嬉しさに咽び泣きました(誇張ではなく本当に)。2ndバトル優勝を経て変化した彼らの関係性と今までの儚く気まぐれなパブリックイメージを見事両立させたリリックは天才というより他はなし。作曲はtofubeats!合わないわけないだろうと。ピコピコした可愛らしいサウンドに物悲しさが混じるtofubeats節は想像以上にマッチしています(斉藤壮馬はこれを聴いて「ヒプノシスマイク終わるの?」と言ったとのこちあち)。この曲のおかげでヒプノシスマイクへの恨みがいくらか薄れ、適切な距離でコンテンツを楽しむことができるようになりました。弥之助の描くヒプノシスマイクの世界が本当に大好き。他の同アルバム収録の新曲だと「Scarface」「でらすげぇ宴」も良かった。(某ハマの中の人は大変なことになっちゃったけど…)

 

女王蜂「introduction」


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 前触れなく急に女王蜂にハマりました。以前アルバム『Q』をよく聴いていたのですが、私の口にはちょっと大きいサイズに切られた具材が入っててめちゃ美味しいけど食べにくい料理って感じだな〜という印象で(?)そんなにハマらなかったのですが、アルバム『十』をたまたま聴き返し、こんなに良い曲しか入ってないアルバムなかなかなくない!?と驚愕。王道ながらどこか懐かしいサウンドと普遍的な人間の苦悶と解放を描く歌詞、裏声と地声を自由に行き交うアヴちゃんのボーカルが良いですね。「もう一度欲しがって」「火炎」「HBD」もめちゃくちゃ聴いてました。

 

・aespa「Girls」


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 今年はテレビを買い替えてずっとYouTubeを観てました。とりわけK-POPは自分なりに昨年よりもさらにたくさん聴くようになり、特にヘビロテしてたのが上記曲です。独特なコンセプトで激戦の第4世代の中でも安定して存在感を示しているaespaは耳に残る楽曲と印象に残るビジュアルで中毒性高し。「Savege」もずっと聴いてました。レドベルとのクリスマス曲「Beautiful Christmas」もよかった。

 

・MAMAMOO「ILLELLA」


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 去年はフィインちゃんの事務所移籍もあり激動の年でしたが、約1年ぶりのカムバはママムらしさ全開の情熱的かつオトナなミディアムナンバー。レゲエ要素も取り入れられていて、聴けば聴くほどやみつきになる曲です。同じアルバムに収録された新曲2曲も安定して良かった。
 あとはなんといっても先月の幕張メッセのイルコン!直前でチケット取ったのでほぼ見えない席ではあったのですがもう〜めちゃくちゃ楽しかったです!生歌の破壊力ハンパなかった。特にフィインちゃんは本当に魅力的な歌声ですね。2ygの契約期間終了が差し迫っているのでぶっちゃけ4人のママムを日本で見れるのはこれが最後の機会だろうと思って行ったのですが、グループ継続と次のイルコンをできる範囲で匂わせてくれました。期待してもいいのかな〜。たまにカムバするだけでいいからママムというグループは残してほしいな〜。

 

団地ノ宮「はてな


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 今年12月に初の全国流通のフルアルバム「ゆうやみずかん」がリリースされ、サブスクも一部解禁されました!本当に嬉しい。
 上記のリード曲「ゆうやみずかん」は弦楽器(打ち込み?)も取り入れられており、今までの世界観を崩すことなく、よりメジャー志向に聴きやすくなった団地ノ宮を示す良曲。特にお気に入りなのは民族音楽の要素も取り入れられた「はてな」です(まさしく菅野よう子が関わってた時期の新居昭乃っぽい)。アルバムとしての完成度でいえば、曲数が少し多めなこともあり、通しで聴くと間伸びしている印象も受けます(インタビューで「好きな曲をつまむ感じで聴いてほしい」的なニュアンスの発言をしていたのでそういう方針なのだと思う)。個人的に「ビデオテープ」「12棟と子供」「おいのりの日」ほど刺さる曲はありませんでした。肌に迫るような狂気・イノセンス(でも子どものころって言うほど無垢ではなかった気がしますね)があまり感じられず、過去作より聴きやすくなったというか、全国流通盤であることもあいまって幅広い層に向けて作られた感じがするからかもしれない。この作品で第1章が閉幕するということでどんな変貌を遂げるのかドキドキではありますが、精力的に活動してくれていることが嬉しいユニットです。
 

内田雄馬「Good mood」


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 内田真礼たその実弟内田雄馬。声優業と並行して精力的にソロ音楽活動を行なっている彼の歌唱力はキングレコードお墨付きではありますが、個人的にはそこまで刺さるタイプの曲がなくてスルー気味でした。ですが上記曲はめちゃくちゃツボ!!全編で鳴り響く優しいピアノの音とグルーブを強く感じさせるミディアムテンポの楽曲に内田雄馬のレンジも懐も広い歌声が似合いすぎ。

 

やくしまるえつこメトロオーケストラ「僕の存在証明」


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 2022年の白眉の一つとして、テレビ放映10周年を記念とした鬼才・幾原邦彦監督の『輪るピングドラム』の総集編が公開されたことが挙げられるでしょう。新規カットも含めた総集編とのことでしたが、「きっと何者にもなれないお前たちに…」という印象的なキーワードと共に、キャラクターたちはテレビアニメ版の良さをそこなうことなく10年の時を経て少しだけ優しく前向きな運命に「乗り換え」ました。新たに書き下ろされた上記曲も、テレビ版主題歌「ノルニル」「少年よ我に帰れ」のフォーマットを踏襲しつつもやくしまる楽曲にしては珍しくストレートなメッセージ性を押し出した作品になっています。
 

白波多カミンwith Placebo Foxes「姉弟


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 2016年リリース楽曲。どういういきさつで知った曲だったかは覚えていない。サビの「仏壇の前で君とセックスした」が出オチにならないどころか楽曲の屋台骨としてしっかり機能していて凄みがあります。轟音のロックサウンドに真っ直ぐ飛び込んでくるフラットで飾り気のないボーカル、家族というハコにおける構成員の移り変わりや死んでいる人間と生きている人間の間に横たわる断絶を淡々と描いた歌詞は素晴らしいの一言につきる。人生の折に触れて聴き返す曲になると思います。
 

 Red Velvet「Psycho」(格調高いコンセプトとフェミニンな5人のボーカルが最高)、麻枝准×やなぎなぎ「White Spell」(スマホゲーム『ヘブンバーンズレッド』関連曲が待望の音源化。安定して最高)、AFRO PARKER「Night Heron」(YONA YONA WEEKENDERS磯野くんの声が最大限に生かされた良曲)、月都スペクタクル「ムーンライトディスコ」(スマホゲーム『あんさんぶるスターズ!!』のイベント曲。BRADIO提供の明るいディスコチックな楽曲とこだまさおり神のユーモアと切なさがほとばしる歌詞が本当に素晴らしいです。推しの巴日和様センター曲でもある)、寺尾紗穂「停電哀歌」(北杜夫の詩に曲をつけたもの。ピアノの弾き語りと清廉なボーカルのみで果てしなく豊かでミクロな世界を生み出しています)、XG「MASCARA」(avex秘蔵っ子グローバルガールズグループの2ndカムバ曲。贔屓目抜きに見ても全てにおいてレベルが高い)、Mill &魔法使いの約束「Skin-Deep Comedy/皮一重の喜劇」(スマホゲーム『魔法使いの約束』メインストーリー第2部主題歌。ダークかつ深遠、中盤の狂気を孕んだ畳み掛けるような展開がたまりません)、フィイン「Make me happy」(移籍後初のカムバ曲。フィインちゃんのメルティーボイスと柔らかな音像のバラード曲相性良すぎ)なども良かったです。
 来年も良い音楽にたくさん出会えるといいな!